〔展示〕
2017年8月25日(金)~9月6日(水)
12:00~20:00(最終日~17:00) ※木曜日休廊
「辺(ほとり)にて」
高橋亜弓
スペース M
〔概要〕
辺(ほとり)とは、際、そのそばなどの場所を意味する言葉だが
中でも水辺を指して使われる。
人は古来から、生と死を水で隔てていた。
死後の世界は川の先であり、船に乗って渡るという表現は
日本でも海外でも共通してみられる文化でもある。
仏教では迷いの混沌を海や川で表し、それを乗り越えた悟りの境地を彼岸、
生死を解脱しない現世を此岸とした。
私の描くものたちは、いわば水を隔てた彼岸の国にいる。
その体に雌雄はなく、言葉を必要としない完結した存在。
私だけの神だ。
私は川のこちら側から、はるか向こうに岸を見る。
到達することのできない、理想の国を見る。
そこに何があるかは遠く、はっきりとわからなくても
「在る」ことだけを私は確かに知っている。
たどり着けない岸へと焦がれながら、私は川の向こうに住まう尊きものを描く。
見えなくとも在ると信ずる私の神達を、
この辺(ほとり)にて佇みながら。
〔プロフィール〕
高橋亜弓 / TAKAHASHI Ayumi
多摩美術大学版画科卒業。
在学中より木版の油性凹版を用い、女性体でもなく、男性体でもない狭間のもの達のかたちを描く。
現在木版を中心にドローイングなど活動。