なぞる人々

〔展示〕
2012年3月2日（金）～7日（水）

12:00～20:00（最終日～17:00） ※木曜日休廊

「なぞる人々」

百瀬文

スペースM、S、E

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〔概要〕

ビデオカメラの再生ボタンを押すと、小さな画面の中で、すっかり小さくなってしまったあなたがこちらを見つめていた。
私が顔を上げたときにはあなたはいつのまにか側に寄ってきていて、今ので良かったかしら、と呟いた。
もうすっかり疲れちゃったわよ、とあなたは顔をしかめて、小さなあなたを覗き込む。
ここにはあなたとあなたがいる。
あなたは時々鼻の下をこすり、少しはにかみながら前方を見つめている。
けれど、今あなたが見つめているのは私ではない。

あなたでもない。
私があなたに手を振っても、もうあなたは手を振りかえしてはくれない。

誰かの視線を感じて横を向くと、あなたがじっと私を見つめていた。
あなたの瞳は私の返事を待っているようにもそれ以外のものにも見えたけれど、それを判断する前に、うん、大丈夫っぽい、今日の撮影は終わりでいいよ、と私は言った。
ふと、あなたに手を振ってみようかと思った。

でもやっぱり怖くなってやめた。