〔プロフィール〕
1985年茨城県生まれ、美術家。東京芸術大学先端芸術表現科修了。
絵画やインスタレーションを中心に作品を展開、素材として生きた植物や廃棄物を用いることもある。
家具をモチーフとしたシリーズでは、制作物という<もの>を通じた<こと>を生み出す試みに挑戦している。
主な展覧会に「mementovivere/memento phantasma」、「取手アートプロジェクト」など。
「アーカスプロジェクト 2010 いばらき」ゲスト・アーティスト。
〔展示〕
2011年9月30日(金)~10月12日(水)
12:00~20:00(最終日~17:00) ※木曜日休廊
「トポフィリア・アップデート」
石塚つばさ、笹川治子、遠藤祐輔、門眞妙、ni_ka、田代未来子、小田原のどか、Mu_________
スペースM、S、E
〔概要〕
これまで数多くの批判に晒されていた立場なき場所である「郊外」を見つめ直し、そこを新たな芸術表現や文化のうまれる場所へと変容させることを目的として企画した展覧会「floating view “ 郊外 ” からうまれるアート」。
そのステイトメントにおいて私は、東京や京都など大都市にも郊外的な風景が広がる現状を指して「世界の全面的な郊外化が進みつつある」と書いた。
もしもその仮定が正しいとするならば、私たちが取り組もうとしているのはもはや「郊外」という地理的に限られた区域に留まらない。
すべての人々が踏みしめ、生きるためのインフラである「場所」そのものに向き合うこと。
それがfloating viewの次なるテーマである。
交通網や移動手段の発達による空間の圧縮、「どこでも同じ」な風景の広がる郊外化、こことは違う場所に別の空間をつくりだすVR(仮想現実)の登場などによって、私たちにとって「場所」は相対的にその重要性が薄まったように見えた。
しかし現実の地理に規定された情報技術であるAR(拡張現実)の登場が象徴するように、近年、「場所」は再び重要性を増している(アニメの聖地巡礼や工場萌え・廃墟萌え・団地ブームなどもその一端を為していると言えるかもしれない)。
また2011年3月の東日本大震災、ならびに福島第一原発の事故は、私たちの「場所」観をさらに大きく揺るがすものだった。
地形そのものが変わってしまう地震や津波、単純な距離では計れない放射性物質飛散の恐怖の中で、「私(あなた)がいま、どこにいるのか」という「場所」の問題を誰もがより切実に考えるようになった。
このような状況で、私たちは今後どのようにして「場所」と関係していけば良いだろうか。
展覧会のタイトルに掲げた「トポフィリア」は人類学者イー・フー・トゥアンによる造語で「場所への愛」を意味するが、では現在、私たちはどのように「場所」への愛(憎)を表現することが出来るだろうか。
floating viewに参加する作家たちは、それぞれ自らの扱うメディア・表現を通して「場所」の問題に取り組み、2011年9月現在、日本、関東、という時空における自らの立ち位置を確かめ、展覧会場に刻み付ける。
ここから、新しい「場所」とのかかわり合いの方法を見出すための第一歩を踏み出すのである。